会社員を辞めて個人事業主になるとき、最初の手続きが開業届です。私は業務委託の契約がまとまったタイミングで、会計ソフトを使って開業届を作り、マイナンバーカードで電子申請しました。画面の案内に沿って進められたので、少なくとも私の場合は、想像よりずっとスムーズでした。
この記事では、開業届と、セットで出しておきたい青色申告の承認申請書の手順を、私の体験で解説します。私はマイクロ法人(合同会社)と個人事業主の二刀流なので、その視点でつまずいた点にも触れます。個人事業主の節税全体の流れは、個人事業主の節税、何から手をつける?で整理しています。

いつ出すか ── 私は契約のめどが立ってから動いた
私の場合、先に「個人事業を始めよう」と決めたわけではありません。業務委託の契約のめどが立ったので、それに合わせて開業の手続きを進めた、という順番でした。
事業開始日は契約のタイミングに合わせて設定し、その翌日に開業届を提出しています。開業届は「事業を始めてから動く」もので、思い立った日にすぐ出さないといけない、というものではありません。仕事の見通しが立ってから準備しても十分間に合います。
開業届とは
開業届(正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」)は、個人事業を始めたことを税務署に知らせる書類です。事業を始めたら提出することになっており、これを出すことで個人事業主として確定申告をしていく土台ができます。
そして、開業届と必ずセットで出しておきたいのが、青色申告の承認申請書です。これを出していないと、最大65万円の青色申告特別控除が使えません。
なお、青色申告特別控除には65万円・55万円・10万円の3段階があります。複式簿記で記帳すると55万円、それに加えて「e-Taxでの電子申告」または「優良な電子帳簿保存」の要件を満たすと65万円になります(簡易簿記だと10万円)。この控除額は、最終的に確定申告のやり方で決まります。
会計ソフトで開業届を作る
私はマネーフォワード クラウド 開業届を使いました。すでに会計ソフトとしてマネーフォワードを使っていたので、同じアカウントでそのまま開業届を作成できました。freee、弥生株式会社にも同様の開業届作成サービスがあります。
画面の案内に沿って、次のような項目を入力していくだけです。

- 事業開始日:事業を始める日
- 仕事の内容・事業内容:私は「受託開発ソフトウェア業/ソフトウェアの設計・開発・運用保守」としました
- 働く場所:自宅
- 家族や従業員に給料を支払うか:私は支払わないを選択
- 所得の種類:事業所得
- 確定申告の種類:青色申告
- 屋号:つけてもつけなくてもOK
入力が終わると、開業届と青色申告承認申請書が自動で作成されます。専門知識がなくても、フォームを埋めるだけで必要な書類がそろうので安心でした。開業届の提出は1日で終わっています。
「65万円」が選べなくて戸惑った話
ひとつ戸惑ったのが、確定申告の種類の選択肢です。私は65万円控除を狙うつもりでしたが、マネーフォワードの開業届には「青色申告55万円控除」までしか選択肢がありませんでした(あとは10万円控除と白色)。

これはおそらく、フォームの時点では「確定申告をe-Taxで出すかどうか」がまだ決まっていないからだと思います。複式簿記の基本は55万円控除で、そこに「e-Taxでの電子申告」または「優良な電子帳簿保存」が加わって初めて65万円になります。申告方法は後から決まるので、フォーム側は複式簿記の基本である55万円までしか提示しようがない、という整理だと理解しました(フォームの注釈にもそう書かれていました)。
なので、ここで55万円を選んでいても問題ありません。複式簿記で記帳し、貸借対照表・損益計算書を作成したうえで、確定申告を期限内にe-Taxで電子申告すれば、65万円控除を狙えます。私はこの記事のとおり開業届の時点からマイナンバーカードで電子申請していたので、確定申告も同じ流れでe-Taxで出し、65万円のラインに乗りました。実際に65万円を取れるかどうかは「確定申告をe-Taxで出すか」で決まる、と押さえておくと安心です。

屋号はどうするか
税務署に提出する開業届上は、屋号は必須ではありません。私も当初は、取引先から個人口座を指定されることが多く、屋号付き口座を増やすと管理が面倒だと考えて、屋号はつけませんでした。

ただし、後から個人事業主用の口座を開設する際、金融機関によっては屋号の有無が関係する場合があります。私の場合、PayPay銀行の個人事業主用口座では屋号が必要でした。そのため、税務上は必須ではないものの、使う銀行や事業用口座の方針に合わせて考えるのが現実的です。
個人事業主の口座開設については、別の記事で解説する予定です。
マイナンバーカードで電子申請
作成した書類は、マイナンバーカードを使ってスマホから電子申請できました。税務署に出向いたり郵送したりする必要はなく、自宅で完結します。

電子申請にはマイナンバーカードと、利用者識別番号(e-Taxの番号)が必要になります。手元に用意してから進めるとスムーズです。
提出後 ── 「受信通知」が電子申請の控えになる
送信すると、e-Taxのメッセージボックスに「受信通知(受付完了)」が届きます。受付番号と受付日時が記録されたもので、私の場合もこれが届いて手続きは完了でした。開業届に対して、別途「承認しました」といった通知が後日くるわけではありません(青色申告の承認申請も、却下されなければ承認扱いになります)。

ここで知っておきたいのが、電子申請では紙のような「収受印を押した控え」が手元に残らないことです。代わりに、この受信通知がそのまま「開業届の控え」の役割を果たします。
開業届の控えは、後々いろいろな場面で求められます。
- 屋号付き口座や事業用口座の開設
- 創業融資・補助金の申請
- 保育園の入園申請(就労証明の代わり)
そのとき慌てないように、受信通知はPDFなどで保存しておくことをおすすめします。私は提出して終わり、にせず受付結果を残すようにしました。
注意点
- 開業届の提出期限は、現在は「事業開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」とされています。以前は事業開始から1か月以内とされていましたが、期限の扱いが変わっているため、最新の国税庁情報を確認しておく必要があります。とはいえ、青色申告承認申請書には別途期限があるため、実務上は開業届と一緒に早めに提出しておくのが安心です。
- 青色申告承認申請書は提出期限に注意が必要です。原則は青色申告を受けようとする年の3月15日までですが、1月16日以後に新たに開業した場合は、事業開始日から2か月以内が期限です。開業届と同時に出してしまうのが確実です。
- 健康保険・年金の切り替えも忘れずに。会社員を辞めると会社の社会保険から外れるため、通常は国民健康保険・国民年金への切り替えが必要です。ただし私のようにマイクロ法人を持っている場合は、社会保険を法人側に乗せる選択肢があります。この仕組みはなぜマイクロ法人だと社会保険料が下がるのか?で解説しています。

- 提出期限や様式は変わることがあります。最新は国税庁のページで確認してください。
まとめ
- 開業届は会計ソフトで作成し、マイナンバーカードで電子申請すれば自宅で完結する
- 仕事の見通しが立ってから動けば十分間に合う(事業開始日に合わせて提出)
- 青色申告の承認申請書を必ずセットで出す(原則3月15日まで/新規開業は事業開始日から2か月以内)
- 65万円かどうかは「複式簿記+確定申告をe-Taxで出すか」で決まる
- 提出後の受信通知は控えの代わり。PDFで保存しておく
- 屋号は必須ではない。必要を感じてから決めてよい
- 健康保険・年金の切り替えも並行して(法人があれば社保を法人側に乗せる選択肢も)
私は開業届の作成にマネーフォワード クラウド開業届を使い、その後の記帳もマネーフォワード クラウドで続けています。開業届の作成、日々の記帳、青色申告まで同じ流れで管理できると、初年度の負担はかなり軽くなりました。
開業後にどう節税を積み上げるかは個人事業主の節税、何から手をつける?に、青色申告の具体的なやり方は青色申告65万円控除を自力でやるにまとめています。私がこの働き方に辿り着くまでの物語は51歳・独身、マイクロ法人FIREという答えです。



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参考(公的機関の一次情報)
本記事で触れた制度の根拠です。最新の要件・金額は各公式ページで必ずご確認ください。
- 個人事業の開業・廃業等届出書:国税庁 タックスアンサー No.2090
- 青色申告の承認申請(原則3月15日/新規開業は2か月以内)):国税庁 タックスアンサー No.2070
- 青色申告特別控除(65万円・55万円・10万円の要件):国税庁 タックスアンサー No.2072
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