会計ソフトを選ぶとき、たいていの人は「freeeとマネーフォワード、どっちか一方」を選びます。でも私はマイクロ法人と個人事業主の二刀流なので、法人をfreee、個人をマネーフォワードと、2つを同時に1年半ほど使い続けてきました。
だからこの記事は、「お試しで両方を少し触ってみた」という比較ではありません。本番の帳簿を、法人と個人で1つずつ、毎月回してきた実感としてのレビューです。現役SEという仕事柄、「どちらが自分に合うのか、両方使って確かめたい」という気持ちもありました。
この記事の特徴は、法人と個人事業主の両方で、実際の帳簿を回しながら比較している点です。単なる機能表ではなく、マイクロ法人+個人事業主の二刀流で使った実感をまとめます。
結論から先にお伝えします。
簿記の知識がそれなりにあるならマネーフォワード、簿記が分からないならfreee。
これは私の実感ですが、後で見るように一般的な評価ともほぼ一致します。なぜそうなるのかを、両方を使った具体的な体験で説明します。
なお、そもそも個人事業主が会計ソフトでどう申告するかは青色申告65万円控除を自力でやる手順に、二刀流の全体像はマイクロ法人と個人事業主の二刀流とは?にまとめています。


なぜ私は「法人freee・個人マネーフォワード」に分けたのか
正直に言えば、法人も個人もどちらかに統一することはできました。それでもあえて分けたのは、両方のシステムを自分で使ってみたかったからです。
現役のSEとして、評判だけで選ぶより、実際に触って「どちらが自分の手に馴染むか」を確かめたい性分でした。結果として、いまは法人と個人の両方を語れる立場になっています。これから書くことは、その1年半の使用感です。
freeeを使ってわかったこと

freeeの最大の強みは、簿記の知識がなくても帳簿ができることです。「いくら、何に使った」という質問形式で取引を登録していくと、裏側で複式簿記の仕訳を自動で組み立ててくれます。借方・貸方を意識しなくても進められる設計で、ここは初めて会計に触れる人に本当にやさしいと思います。
一般的にも、freeeは銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込み、AIが勘定科目を推測して仕訳を自動作成する自動化の強さが評価されています。連携できる外部サービスも数千にのぼり、スマホアプリだけで確定申告まで進められる設計なので、移動中や外出先で経費処理を片づけたい人には相性がよいはずです。「経理は苦手だけど自分でやりたい」という人を、徹底して助けにいく作りだと感じます。
一方で、私はわりと早い段階で、freeeの中の「振替伝票」(通常の複式簿記で入力する方法)に切り替えました。私の場合、取引の数も少なく内容も単純だったので、簿記がある程度分かっていると、freee独自の入力方式より振替伝票で直接仕訳したほうがイメージしやすかったのです。freeeの「取引」という独自概念に最初は戸惑う、という声は一般的にもよく聞かれます。

弱点も正直に書いておきます。私が地味に戸惑ったのは、インボイス制度の少額特例に関するアラートが自動で出てきたことでした。当面は課税事業者になる予定がなかったので、調べたうえで設定を解除しましたが、知識がないと「これは何だろう」と手が止まります。自動化が手厚いぶん、自分の状況に合わない提案まで出てくることがある、という裏返しです。料金も、個人向け最安プランで比べるとマネーフォワードよりやや高めです。

つまりfreeeは、「簿記を知らない人を助ける作り」が徹底されている分、簿記が分かる人には少し回り道に感じる場面がある、というのが私の実感でした。
マネーフォワードを使ってわかったこと

逆にマネーフォワード クラウド確定申告は、簿記の概念がそのまま操作に出てくるタイプです。事業主借・事業主貸・元入金・売掛金といった勘定科目を、簿記の知識をもとに自分で当てていく感覚に近い。だから簿記が分かる人には、むしろこちらのほうが直感的でした。
連携の広さも強みです。一般的にも、マネーフォワードは国内の銀行・クレジットカードをほぼ網羅し、ほかにも数千のサービスの明細を自動で取り込める点が評価されています。家計簿アプリのマネーフォワード MEなど、同社の他サービスとデータをつなげられるのも、すでにMF系を使っている人にはうれしいところです。
弱点も書いておきます。まず、freeeと比べると画面のレイアウトが少し洗練されていないと感じます(トップページの右側の余白が個人的に気になります)。これは慣れの問題ではありますが。また一般的には、レポート機能はfreeeほど作り込まれていないという声や、いちばん安いプラン(私が使っているパーソナルミニ)では消費税の申告書が作れないといった制限もあります。簿記の用語や操作が初心者にはやや難しい、という指摘もあり、これは裏を返せば「簿記が分かる人向け」ということでもあります。
そして、これは正直な本音ですが ── そもそも私は、マネーフォワードもfreeeも、機能に不満が出るほどには使いこなせていません。どちらも小規模な事業には十分すぎる、というのが実感です(この点は、あとの章で改めて触れます)。
設計思想は「メニューの言葉と並び」に表れている
両方を使っていていちばん面白いと感じたのが、メニューの言葉づかいと並び順に、それぞれの思想がそのまま出ていることです。
freeeでは、入力系のメニューが「取引入力」と呼ばれ、その中でも「銀行・カードの明細から自動で経理」が主役に置かれています。手で入力する方法もありますが、最初に来るのは「収入・支出形式」という、簿記を使わずに「いくら入って、いくら出たか」で登録するスタイル。複式簿記そのものである「振替伝票」は、手動メニューのいちばん下にあります。「経理」「取引」といった、簿記を知らない人でも身構えない言葉が選ばれているのも特徴です。

一方マネーフォワードは、そもそもメニューが「自動で仕訳」「手動で仕訳」と、簿記用語の「仕訳」で構成されています。そして「手動で仕訳」を開くと、いちばん上に来るのが「振替伝票入力」。freeeでは隅に置かれていた複式簿記の入口が、マネーフォワードでは正面に出てくるわけです。

つまり、同じ「手で入力する」でも、freeeは簿記を最後に・マネーフォワードは簿記を最初に置いている。メニュー設計そのものが「このソフトは誰に向けて作られたのか」を物語っています。私がfreeeで振替伝票に切り替えたのも、言ってみれば「マネーフォワード的な使い方」をfreeeの中で探していたようなものでした。
料金で比べると
コスパは多くの人が気にする点なので、料金にも触れておきます。個人向けの最安プランで比べると、わずかにマネーフォワードが安い設定です。
ただしパーソナルミニは仕訳や口座連携の件数などに制限があり、使い込むと上位プランが必要になることもあります。
なお法人向け(私が使っているfreeeの「ひとり法人」プランなど)は、個人向けとは別の料金体系です。プランや価格は改定されることがあるので、最新の正確な金額は各社の公式ページで確認してください(記事末にリンクを置いています)。
結局、どっちが向いているのか
両方を1年半使った私の結論は、最初に書いたとおりです。
- 簿記が分からない/とにかく簡単に終わらせたい → freee
- 簿記がある程度分かる/従来の会計ソフトに近い操作が好み → マネーフォワード
おもしろいのは、これが私の個人的な実感にとどまらず、会計ソフトを比較している税理士やレビュー記事の多くも、ほぼ同じ結論だという点です。「簿記知識ゼロで自動化重視ならfreee、簿記知識ありでコスパ重視ならマネーフォワード」という整理は、各所で共通して語られています(記事末に出典を置いています)。
自分の体験と一般的な評価が一致していたので、私はこの結論をけっこう自信を持ってお伝えできます。
正直な但し書き:小規模だと、機能はたぶん過剰
ここまで比較しておいて何ですが、正直な実感も書いておきます。マイクロ法人+SEの業務受託くらいの規模だと、freeeもマネーフォワードも機能が過剰です。私自身、両方とも機能の大部分を使えていません。
そのため、導入初年度は大手のクラウド会計で操作と申告の流れに慣れて、慣れたあとはいわゆる「税理士いらず」系の買い切り型ソフトに落ち着くという選び方も、理屈の上ではアリだと思います。
ただし現実には、一度クラウド会計(SaaS)に乗ると、なかなか移行できません。過去データ・連携設定・操作の慣れが積み上がるほど、乗り換えのコストは重くなります。だからこそ、最初にどれを選ぶかが効いてきます。
この「降りられなさ」を、実際にマネーフォワードの連携が1か月止まったときに痛感した話は、noteに書きました。
こちらも合わせてどうぞ。

余談ですが、AIの進化で会計ソフトの使い方も変わっていくかもしれません。このあたりは、いずれ別記事で整理したいと思います。
まとめ
会計ソフト選びは、突き詰めると「あなたに簿記の知識があるかどうか」でだいたい決まります。
- 簿記が分からないなら freee(簿記を知らなくても帳簿ができる)
- 簿記が分かるなら マネーフォワード(簿記の概念がそのまま操作に出る)
- 小規模なら、正直どちらも機能は十分すぎる ── だからこそ気軽に試して、手に馴染むほうを選べばいい
そして私のように二刀流なら、法人と個人で分けて、両方を体験してみるのも一つの手です。どちらも無料お試しや低価格プランから始められるので、迷うくらいなら一度触ってみるのが結局いちばんの近道でした。
- 個人で青色申告をどう進めるかは青色申告65万円控除を自力でやる手順
- 二刀流という働き方そのものはマイクロ法人と個人事業主の二刀流とは?


もあわせてどうぞ。
私は、法人ではfreee、個人事業主ではマネーフォワードを使っています。どちらも合う・合わないがあるので、迷う場合は最新の料金プランと無料体験の有無を確認して、一度触ってみるのが早いです。
参考(各社公式・比較情報)
- 確定申告ソフトの料金(マネーフォワード クラウド 公式)
- 個人事業主/副業向け 価格・料金プラン(マネーフォワード クラウド 公式)
- freee会計(個人事業主向け 公式)
- 会計ソフトおすすめ比較 freee・マネーフォワード・弥生【2026年版】(株式会社renue)
- 確定申告に関する手引き等(国税庁)
免責表記
本記事は運営者個人の体験・見解を記録したものであり、特定の金融商品・税務判断・投資手法を推奨するものではありません。実際のFIRE設計・法人設立・税務処理にあたっては、税理士・社労士・ファイナンシャルプランナー等の専門家にご相談ください。投資判断は自己責任でお願いします。



















