7月は、マイクロ法人にとって「算定基礎届(さんていきそとどけ)」の提出月です。従業員がいない代表ひとりだけの会社でも、社会保険に加入している以上、この手続きは毎年やってきます。
私はマイクロ法人と個人事業主の二刀流で、役員報酬を最低水準に抑えています。この算定基礎届は、そうやって「役員報酬を低くしておく」恩恵が、社会保険料という具体的な数字になって確定する手続きでもあります。この記事では、算定基礎届とは何か、そして実際にひとり社長の私がどう提出したかを、体験を交えて解説します。
「そもそもなぜ二刀流にするのか」という全体像は、マイクロ法人と個人事業主の二刀流とは?で解説しています。私がここに至るまでの道のりは51歳・独身、マイクロ法人FIREという答えにまとめていますので、あわせてどうぞ。


算定基礎届とは ── 社保の「定時決定」
社会保険料(健康保険・厚生年金)は、報酬をそのまま使うのではなく、標準報酬月額という区切りのよい等級に当てはめて計算します。この標準報酬月額を、年に1回まとめて見直す手続きが定時決定であり、そのために提出する書類が算定基礎届です。
仕組みはシンプルです。
- 通常の月給制で、4月・5月・6月の支払基礎日数がいずれも17日以上の場合、3か月の報酬平均を出す
- その平均額を標準報酬月額の等級に当てはめる
- 決まった等級は、その年の9月から翌年8月までの保険料に使われる
つまり夏に一度決めた等級で、1年間の社会保険料が動くわけです。令和8年度の提出期間は、7月1日(水)から7月10日(金)までです。
役員報酬が低いと「最低等級」に張り付く
ここがマイクロ法人ならではのポイントです。
社会保険料の等級には、いちばん下の段(最低等級)があります。報酬をそこまで下げれば、保険料はそれ以上は下がりません。健康保険(協会けんぽ)の標準報酬月額は最低が58,000円の等級、厚生年金保険は最低が88,000円の等級です。報酬月額がこの下限を下回っていても、保険料はこの最低等級で計算されます。
協会けんぽの場合、以下のサイトで保険料額を確認できます。
東京の場合は以下になります。アンダーラインは、健保=等級1(58,000円)/厚年=等級4(1)(88,000円)の各最低等級を示しています。

私は役員報酬を月54,000円に設定しています(この金額にした理由はマイクロ法人の役員報酬はいくら?で詳しく書きました)。54,000円は健康保険・厚生年金のどちらも最低等級の範囲内です。そのため、算定基礎届で4〜6月の平均を出しても、標準報酬月額は自動的に最低等級に張り付きます。社会保険料は最低水準で確定するわけです。

役員報酬を上げても、社保は変わらなかった
今年の算定基礎届で、私にとって少し面白い発見がありました。
じつは私は、第1期の役員報酬を月45,000円にしていました。それを今期から54,000円に増額しています。「報酬を上げたのだから、社会保険料も上がるのでは?」と身構えていたのですが、結論は変わらずでした。
理由は等級の幅にあります。健康保険の最低等級(58,000円)も厚生年金の最低等級(88,000円)も、その等級に当てはまる報酬には一定の幅があります。45,000円も54,000円も、どちらもその最低等級の幅の中に収まっているため、標準報酬月額は同じ。結果として社会保険料も同じでした。
「報酬を9,000円上げても社保は1円も増えない」 ── これは、役員報酬を最低水準の“のりしろ”の中で調整しているマイクロ法人だからこそ起きることです。給与所得控除の最低保障額を意識して役員報酬を調整しても、社保の等級は動かない。低く抑えることの意味が、こういう場面で実感できます。
電子申請でやってみた(Macでも完結)
提出方法は郵送と電子申請から選べます。私は昨年に続き、今年も電子申請で済ませました。
注意したいのが、Macユーザーの環境です。日本年金機構が配布する「届書作成プログラム」はWindows専用ですが、これを使わなくてもe-Gov電子申請はmacOSに対応しています。従業員がいないマイクロ法人なら、e-Govに直接入力してしまうのがいちばんシンプルでした。(OSの対応状況は申請時点で確認してください)
大まかな流れは以下の通りです。
e-Gov電子申請アプリケーションから起動します。アプリのインストールはこちらをご確認ください。
事前にアカウント取得が必要なので、前もって取得しているとスムーズに進みます。
アプリを起動し、ログインします。

使用する認証方法を選択します。私は、アプリ認証を使用しました。

上部のメニューから、「手続検索」を押下し、被保険者報酬月額算定基礎届(単記用)を選択します。

申請画面に必要事項を記入していきます。ひとり法人の場合、被保険者は自分ひとりになります。私の場合、役員報酬が54,000円のため、以下のように記入しました。従前の標準報酬月額は最低等級のため、健康保険が58,000円、厚生年金が88,000円となります。

提出先の年金事務所を選択します。

内容を確認して提出します。しばらくすると、ステータスが審査中となります。

入力する被保険者は自分ひとりなので、迷う項目はほとんどありません。提出後はステータスが「審査中」に変わり、そのまま受理を待つかたちです。実際に私は7月1日に提出し、翌日にはステータスが審査中になっていました。
決まった保険料は口座振替で払う
定時決定で確定した社会保険料は、毎月支払っていきます。私は納付書での都度払いをやめ、口座振替に切り替えました。社会保険料の口座振替は、法人口座から自動で引き落とされるので、払い忘れの心配がなくなります。
私の場合は社会保険料の引き落とし用に三井住友銀行系の口座を使っていますが、申出書を銀行の窓口に持ち込み、年金事務所へ送ってもらう流れで、開始まで少し時間がかかりました。この口座振替まわりの体験は、別の記事であらためて書く予定です。
二刀流だからこそ「役員報酬だけ」で決まる
最後に、この算定基礎届が二刀流の妙とどうつながるかを確認しておきます。
算定基礎届で見るのは、あくまで法人から支払う役員報酬だけです。個人事業のほうでどれだけ所得があっても、その金額は標準報酬月額の計算には一切入りません。ただし、法人と個人事業の売上・契約・業務内容は、実態に沿って区分しておくことが前提です。そのため、役員報酬を最低等級に抑えている限り、個人事業の稼ぎが大きくても社会保険料は最低水準のまま確定します。
なぜマイクロ法人だと社会保険料を抑えられるのか、その仕組み全体はなぜマイクロ法人だと社会保険料が下がるのか?で解説しています。算定基礎届は、その仕組みが毎年7月に数字として確定する手続きだと考えると、位置づけがすっきりします。

マイクロ法人にとって算定基礎届は、身構えるほど大変な手続きではありません。被保険者は自分ひとり、電子申請ならMac/Windowsでも完結します。それでいて、役員報酬を低く抑えてきた1年間の意味が、社会保険料という結果になって表れる ── そんな節目の手続きです。
算定基礎届は、マイクロ法人が毎年くり返す定例手続きのひとつです。7月に限らず年間でどんな手続きがあるのかは、マイクロ法人の設立後にやる手続き一覧にまとめています。

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参考(公的機関の一次情報)
- 日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryogaku/hoshu/20140710.html
- 日本年金機構「標準報酬月額・標準賞与額とは?」https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryogaku/hoshu/20150406.html
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「保険料額表」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat330/sb3150/
- e-Gov電子申請 https://shinsei.e-gov.go.jp/
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