個人事業主は、開業届を出して終わりではありません。届出を出したその日から、確定申告・住民税・予定納税といった手続きが、毎年決まった時期にやってきます。
私は2025年2月に個人事業主として開業し、マイクロ法人と個人事業主の二刀流で事業を回しています。開業するときは「開業届の書き方」を必死に調べたのですが、開業したあとに毎年何が来るのかは、意外とまとまった情報がありませんでした。実際、私は6月に住民税の納付書が届いて驚き、その数日後に予定納税の通知が届いてもう一度驚きました。全体像が見えていなかったからです。
この記事は、そうした「個人事業主が1年でくり返す手続き」を年間カレンダーで一望できる入口です。いつ何をやるのかをまず俯瞰し、それぞれの詳しいやり方は個別の記事に案内していきます。「そもそもなぜ二刀流なのか」という全体像は51歳・独身、マイクロ法人FIREという答えにまとめています。

なお、同じ個人事業主向けでも個人事業主の節税、何から手をつける?は「何で節税するか」を扱う記事です。この記事はその隣にあたる「いつ何を出すか」を引き受けます。節税策を選ぶ前に、まず1年の流れを押さえておくと迷いません。

「一度きりの手続き」と「毎年くり返す手続き」を分ける
個人事業主の手続きは、大きく二つに分けると整理しやすくなります。
- 一度きりの手続き(開業時) ── 開業届と青色申告承認申請書を出し、事業用の口座やカードを用意する。事業を始めるときに一回だけやる作業です。
- くり返す手続き(開業後) ── 記帳・確定申告・住民税・予定納税など、事業を続けるかぎり毎年回っていく作業。この記事の主役はこちらです。
開業前は前者ばかりを調べます。ところが実際に効いてくるのは後者で、しかも税金は「後から」来るという個人事業主特有のクセがあります。会社員時代のように毎月の給与から自動で引かれるわけではないので、届く順番と時期を知っておかないと資金繰りで慌てます。
開業までにやったこと(一度きり)
まず、一度きりのほうを片づけておきます。私が開業前後に実際にやったのは、次の3つでした。
開業届と青色申告承認申請書
事業開始日を2025年2月1日として、その前の1月20日に開業届を提出しました。会計ソフトの開業届サービスで書類を作り、マイナンバーカードを使って電子申請しています。税務署の窓口へ行く必要はありませんでした。
私が開業した2025年当時は、開業届は開業から1か月以内が原則でした。現在は制度が変わり、開業届は開業した年分の所得税の確定申告期限までに提出する扱いになっています。一方、青色申告承認申請書の期限は別で、1月16日以降に開業した場合は開業日から2か月以内です。
青色申告をするなら、開業届と青色申告承認申請書を同時に出しておくのがおすすめです。青色申告の承認申請には「開業から2か月以内」という期限があり(その年の1月15日以前に開業した場合は、3月15日までが期限です)、これを逃すとその年は青色申告特別控除(最大65万円)が使えません。あとから取り返せない手続きなので、開業届と同時に出してしまうのが安全です。
詳しくは開業届の出し方で解説しています。

事業用の口座を分ける
開業の直前、2025年1月に事業用の決済口座としてPayPay銀行の口座を開設しました。屋号をつけた事業用の口座です。
個人の生活費と事業のお金が同じ口座で混ざっていると、記帳のたびに「これは事業か生活か」を仕分ける手間が延々と発生します。口座を分けておけば、会計ソフトに連携したときの取引がほぼそのまま事業の記録になります。開業前にやっておくと、あとがラクです。
事業用のクレジットカード
当初はデビットカードで足りると思っていたのですが、決済できない場面が思ったより多くありました。そこで2025年5月から、マネーフォワード ビジネスカードを事業用のカードとして使っています。
口座と同じ理屈で、カードも事業用を1枚分けておくと記帳が一気に軽くなります。
ここまでが一度きり。ここから先が、毎年くり返す本題です。
個人事業主の年間手続きカレンダー
ひとりで事業を回している個人事業主を前提に、1年でくり返す主な手続きを時期順に並べると、次のようになります(納期は自治体や事業の状況によってずれます。ここでは目安として示します)。
| 時期 | 手続き | 内容 |
|---|---|---|
| 毎月 | 記帳 | 会計ソフトで日々の取引を記録する。ためると確定申告が地獄になる |
| 2月16日〜3月15日 | 確定申告・所得税の納付 | 前年の所得を申告し、所得税を精算する。青色申告なら最大65万円の控除 |
| 3月31日まで | 消費税の申告・納付 | 課税事業者の場合。免税事業者は不要 |
| 6月 | 住民税の納付書が届く | 前年の所得をもとに市区町村が計算。普通徴収で年4回に分けて納める |
| 6月 | 予定納税の通知が届く | 前年の所得税が一定額以上だと、今年分の所得税を前払いする |
| 7月15日まで | 予定納税の減額申請 | 今年の所得が下がる見込みなら、前払い額を減らす申請ができる |
| 7月 | 予定納税(第1期) | 6月の住民税に続いて7月に予定納税が来るため、資金流出が続く時期 |
| 8月・11月 | 個人事業税 | 都道府県税。法定業種の場合に課税。事業主控除は原則年290万円 |
| 11月15日まで | 予定納税の減額申請(第2期分のみ) | 夏以降に所得見込みが下がった場合 |
| 11月 | 予定納税(第2期) | 今年分の所得税の2回目の前払い |
| 12月 | 共済・ふるさと納税の締め | 小規模企業共済や経営セーフティ共済の掛金、ふるさと納税はその年の12月末までが勝負 |
こうして並べると、山場は「6〜7月」と「2〜3月」の二つだと分かります。6月に住民税と予定納税の通知が続けて届き、7月は資金流出が続く時期になります。そして年が明けると確定申告です。この二つの山を越えていくのが、個人事業主の1年です。
以下、カレンダーの順に沿って各手続きを見ていきます。
毎月:記帳
いちばん地味で、いちばん効く作業です。私は個人事業をマネーフォワード クラウド、マイクロ法人をfreee会計と、会計ソフトを使い分けて並行運用しています。
事業用の口座とカードを分けてソフトに連携しておけば、日々の取引は自動で取り込まれます。あとは仕訳を確認していくだけです。逆にこれをためると、確定申告の直前に1年分の記憶をたどる作業が発生します。青色申告特別控除の65万円は、複式簿記による記帳と、期限内の電子申告(または優良な電子帳簿の保存)が条件です。毎月の記帳は、その65万円を守るための作業でもあります。
2〜3月:確定申告
前年1年分の所得を申告し、所得税を精算します。期間は原則として2月16日から3月15日まで。青色申告で最大65万円の控除を取るには、期限内の提出が絶対条件です。1日でも遅れて期限後申告になると、65万円どころか10万円控除まで落ちます。55万円と65万円の差は、e-Taxによる電子申告(または優良な電子帳簿の保存)をしているかどうかです。
なお、前年に予定納税をしている場合は、確定申告で精算されます。前払いした分は納める税額から差し引かれるので、申告書に予定納税額を正しく書き忘れないようにします。
詳しくは青色申告65万円控除を自力でやるで解説しています。

6月:住民税と予定納税の通知が「続けて」来る
個人事業主になって、いちばん面食らったのがこの月でした。
住民税の納付書(普通徴収)
私の場合、会社を退職して給与からの天引きがなくなったため、住民税は普通徴収になり、自分で納めるようになりました。6月ごろに市区町村から納付書が届き、原則として年4回(6月・8月・10月・翌1月)に分けて納めます。
厄介なのは、住民税が前年の所得をもとに計算されることです。今年の売上が落ちていても、去年よく稼いでいれば容赦なく請求が来ます。
詳しくは個人事業主の住民税をPayPayで納付で解説しています。

予定納税等通知書
住民税の納付書に驚いた数日後、今度は税務署から予定納税の通知が届きました。前年分の所得税が一定額(予定納税基準額15万円)以上だと、今年分の所得税を先に前払いさせられる制度です。7月と11月の2回に分けて納めます。
私の場合、個人事業2年目の2026年からこれが始まりました。事業が育った証でもあるのですが、住民税の直後にもう一段来るので体感としてはなかなかのものです。今年の所得が下がる見込みなら、7月15日までに減額申請という手も残されています。
詳しくは個人事業主の予定納税で解説しています。

8月・11月:個人事業税
都道府県に納める税金です。ポイントは事業主控除が年290万円あること。個人事業税には年間290万円の事業主控除があります。ただし、所得税の青色申告特別控除は個人事業税には適用されず、営業期間が1年未満の場合は290万円も月割りになります。また、法定業種に該当する場合だけ課税されます。
ちなみに私のところには、今のところ個人事業税の納税通知書は届いていません。法定業種に当たるかどうかは都道府県が判断するため、同じような働き方をしていても、来る人と来ない人がいます。法定業種に該当する可能性がある場合は、8月ごろの通知も見込んで資金を残しておくと安心です。
12月:その年のうちにしか動かせないもの
年末は「間に合わせる」ための月です。小規模企業共済や経営セーフティ共済の掛金、ふるさと納税は、その年の12月31日までに払い込んだ分しかその年の申告に乗りません。確定申告のときに気づいても、もう動かせません。
どの制度をどう使うかは個人事業主の節税、何から手をつける?にまとめています。12月に慌てないよう、秋のうちに一度見ておくのがおすすめです。

二刀流だと「やらなくて済む」手続きがある
ここまでが個人事業主の一般的な手続きですが、私の場合、多くの解説記事に出てくるはずの手続きが最初から存在しませんでした。国民健康保険と国民年金への切替です。
会社を辞めて個人事業主になる人は、通常このどちらかを選ぶことになります。会社を辞めて個人事業主になる場合、健康保険は任意継続や国民健康保険への加入を検討し、年金も厚生年金から国民年金第1号へ切り替える必要があります。それぞれ期限があり、国民年金は原則14日以内、協会けんぽの任意継続は20日以内です。
私は退職後、そのままマイクロ法人の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入しました。社会保険に入っているのは法人側なので、個人事業主としては国保にも国民年金にも切り替えていません。市区町村の窓口へ行く用事そのものがなかったわけです。年金の記録も厚生年金のまま途切れません。
これは手続きが減るという話にとどまりません。国民健康保険の保険料は前年の所得に連動して上がっていきますが、マイクロ法人の社会保険料は役員報酬をもとに決まります。役員報酬を低く設定していれば、個人事業の所得がいくら伸びても社会保険料はそこに引きずられません。二刀流のいちばん分かりやすい果実が、この「毎年の手続きと保険料」に出ます。
- なぜ二刀流という形にしたのかはマイクロ法人と個人事業主の二刀流とは?
- 社会保険料が下がる仕組みそのものはなぜマイクロ法人だと社会保険料が下がるのか


ただし、これは法人側に別の定例手続きを抱えることと引き換えです。算定基礎届や源泉所得税など、法人には法人の1年があります。そちらはマイクロ法人の設立後にやる手続き一覧にまとめました。個人と法人、二つのカレンダーを並べて回すのが二刀流の実務です。

まとめ:1年の地図を持っておく
個人事業主の手続きは、覚えることが多いように見えて、山は二つしかありません。
- 6〜7月の山 ── 住民税と予定納税の通知・納付が続き、前年所得をもとにした税負担が立て続けに来る。前年の所得をもとに「後から」来るのが特徴
- 2〜3月の山 ── 確定申告。ここを期限内に電子申告できるかで、青色申告特別控除65万円が決まる
そして、この二つの山を軽くするのが毎月の記帳と、12月までに終わらせる共済・ふるさと納税です。開業のときに調べた「一度きりの手続き」よりも、こちらのほうが長く付き合うことになります。
私自身、2年目の6月に通知が立て続けに届いて、順番に驚きながら片づけていきました。ひととおり受け取ってみて、ようやく1年の地図が頭に入った感覚があります。これから開業する方は、開業届を出す前にこのカレンダーだけ眺めておくと、6月の郵便物に慌てずに済むはずです。
開業前の私が何を調べていて、何を調べていなかったのか。その過程はnoteに書きました。

📚 関連記事
- 開業届の出し方|会社員から個人事業主へ、会計ソフトで電子申請した手順 ── 一度きりの手続き。青色申告承認申請書との同時提出まで
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- なぜマイクロ法人だと社会保険料が下がるのか?|二刀流の仕組みを解説 ── 社会保険料が下がる仕組み
- マイクロ法人の設立後にやる手続き一覧|毎年くり返す社保・税務の定例業務 ── 法人側のもう一つの年間カレンダー
参考(公的機関の一次情報)
- No.2070 青色申告制度(国税庁)
- No.2072 青色申告特別控除(国税庁)
- No.2040 予定納税(国税庁)
- No.2230 予定納税額の減額申請(国税庁)
- 個人事業税(東京都主税局/各都道府県の例)
- 国民健康保険の加入・脱退の手続き(厚生労働省)
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