2026年度から、協会けんぽに人間ドック健診の補助が新設されました。最高25,000円です。私はこの制度を使って、7月に人間ドック(経鼻の胃カメラつき)を受けてきました。窓口での支払いは22,300円でした。マイクロ法人を持って社会保険に入っていると、こういう「受け取る側」のメリットが年に一度回ってきます。設立後に毎年くり返す手続き全体の地図はマイクロ法人の設立後にやる手続き一覧にまとめていますが、本記事はそのうち健診にしぼった実践編です。

会社を辞めると、健康診断は「自分で取りに行くもの」になる
会社員だったころ、健康診断について自分で考えたことは一度もありませんでした。時期が来ると会社から案内が来て、指定された日に指定された場所へ行けば終わり。費用も全額会社負担です。
独立して一番はっきり変わったのが、ここでした。誰も案内をくれません。
放っておくと、健診はそのまま一年、二年と抜け落ちていきます。悪意のあるサボりではなく、単に思い出す機会がないからです。私は50歳を超えたころに「毎年7月に受ける」と決めて、Obsidianのタスクに固定しました。日付を先に決めてしまわないと、たぶん受けなくなると思ったからです。
そしてもう一つ、独立して初めて知ったことがあります。健診には加入している健康保険から補助が出る、ということです。会社員時代は会社が全部やってくれていたので、その存在すら意識していませんでした。
2026年度から、協会けんぽの人間ドックに補助がついた
私の場合、マイクロ法人で社会保険に加入し、健康保険は協会けんぽに加入しています。なぜ二刀流だと社会保険料が下がるのかという仕組みのほうはなぜマイクロ法人だと社会保険料が下がるのかで書きました。あちらが「払う側」の話だとすれば、この記事は「受け取る側」の話です。

協会けんぽの健診は2026年度(令和8年度)に大きく変わりました。ポイントは2つです。
- 人間ドック健診への補助が新設(最高25,000円・35〜74歳の被保険者)
- 20歳・25歳・30歳向けの「一般健診(若年)」が新設
これまでの協会けんぽの健診は、実質的に「生活習慣病予防健診」の一本でした。約20,000円相当の内容を、自己負担最高5,500円(35歳以上)で受けられるというものです。ここに、より詳しい検査を受けたい人向けの選択肢として人間ドックが加わった、という構図になります。
ただし注意点があります。補助が使えるのは年度内に1人1回、人間ドック健診か生活習慣病予防健診のどちらか一方だけです。両方を補助つきで受けることはできません。つまり毎年、どちらかを選ぶことになります。
一般健診5,282円か、人間ドック22,300円か
私は2025年度、生活習慣病予防健診(一般健診)を受けています。新宿の健診機関で、自己負担は5,282円でした。20,000円相当の検査が5,000円ちょっとで受けられるわけで、コストパフォーマンスとしては文句のつけようがありません。
それでも2026年度は人間ドックに切り替えました。理由は2つです。
1つは、年齢です。50代に入ると、一般健診の項目だけでは物足りなくなってきます。一般健診にも胃の検査は含まれていますが、標準は胃部エックス線で、内視鏡に変えられるかどうかは受診する施設しだいです。人間ドックなら、内視鏡を含む詳しい検査をはじめから組んで選べます。「まだ大丈夫だろう」で先送りできる年齢ではなくなった、という自覚のほうが先にありました。
もう1つは、生活が変わる直前だったことです。私はこのあと移住を控えていて、通う病院も変わります。生活が変わる前に一度、詳しいほうを受けて基準点を作っておきたかったのです。健診結果はその年の数値だけでなく、前年までとの経年変化を見ることにも意味があります。基準点を作るなら、環境が変わる前が一番いいタイミングでした。
結果、支払いはこうなりました。
| 年度 | 受けたもの | 自己負担 |
|---|---|---|
| 2025年度 | 生活習慣病予防健診(一般健診) | 5,282円 |
| 2026年度 | 人間ドック + 経鼻胃部内視鏡(オプション) | 22,300円 |
差額は約17,000円です。人間ドックは補助を使っても、一般健診ほど安くはなりません。ここは正直に書いておきます。
ここで注意したいのが、補助の上限25,000円を引けば誰でも同じ金額になるわけではないということです。協会けんぽが示している例では、人間ドックの総額35,000円に補助25,000円で自己負担10,000円となっています。それでも私の支払いが22,300円だったのは、受けた施設のコース料金そのものが、その例よりも高かったからです。私が申し込んだのは胃カメラ検査を含む被保険者向けのコースで、施設のサイトにも補助を適用したあとの価格として22,300円と最初から表示されていました。総額がいくらでそこから何円が引かれたのか、という内訳は窓口でも示されていません。
つまり自己負担額は、どの施設のどのコースを選ぶかでかなり動きます。「補助が出るから1万円で受けられる」と思い込んで探すと、予約の段階で金額を見て驚くことになります。それでも私は「人生の必要経費」と割り切って払いました。
選び方の目安としては、こう考えるとシンプルです。
私自身は、毎年の定点観測には生活習慣病予防健診を使い、年齢の節目や生活環境が変わる年には人間ドックを選ぶ、という使い分けを考えています。なお、具体的な症状や気になる異変がある場合は、健診ではなく医療機関への受診が基本です。
毎年ドックである必要はないと思っています。数年に一度ドック、あいだの年は一般健診、という組み合わせが現実的です。
申し込みの実際 ── 協会けんぽへの手続きは不要だった
ここからは実際の手順です。
まず健診機関を探します。協会けんぽの公式サイトから、補助の対象になっている医療機関を検索できます。ここが最初の関門で、人気のある施設は予約が埋まります。私は前年に使った施設を続けて使うつもりでいたのですが、希望日がまったく取れませんでした。結局、別の施設をあらためて探し直しています。6月に動き出したのでは遅い、というのが実感です。
次に、その健診機関へ直接予約します。ここで拍子抜けしたのが、協会けんぽ側への申込手続きが一切いらないことです。事業所として何かを申請する必要はなく、医療機関に直接申し込めば完結します。前年に一般健診を受けたときも同じで、協会けんぽに出したものは何もありませんでした。ひとり社長にとっては、手間が一段少ないところです。
申込フォームでつまずいたのは、マイナ保険証の入力でした。保険者番号・記号・番号といった項目を入力するのですが、フォームの並び順が、マイナ保険証の券面や画面の並び順と一致していません。どれがどれだか分からず、確認しながら入れる羽目になりました。ここは急いでいると間違えます。券面を見ながら、項目名を一つずつ照合して入れるのが確実です。

私の場合、申込から予約確定のメールが届くまで2日ほどでした。確定メールに記載されていた内容はこうです。
- 受診日時
- 受診コース:人間ドック
- オプション:(経鼻)胃部内視鏡検査
- 窓口支払い金額:税込22,300円
金額が確定するのはこのタイミングです。オプションを付けると変わるので、申込時の表示金額と最終額が違うことがあります。
予約確定から当日までにやったこと
予約が確定すると、後日、案内資料と検査キットが郵送で届きます。当日あわてないために、私が実際にやったこと・持って行ったものを挙げておきます。

- メガネ(コンタクトの人はケースと洗浄液も)── 眼圧検査があるため、コンタクトは外します
- マイナンバーカードの現物 ── 私が受診した施設では、スマホのマイナ保険証には対応しておらず、マイナンバーカード現物が必要でした。
- 前年の健診結果 ── 私は施設を変えたので持参しました。比較してもらえるかどうかは施設によりますが、持って行って損はありません
- 前日夜からの絶食 ── 胃カメラを付ける場合は特に指示が細かくなります
見落としやすいのはマイナンバーカードの現物です。ふだんスマホで保険証を済ませている人ほど引っかかると思います。
当日の流れと、想定外だった追加費用
受診日は朝8時受付の一番乗りにしました。健診は早い時間ほど待ち時間が短く、絶食の時間も短くて済みます。予約を取るときは時間帯まで意識して選ぶ価値があります。
経鼻の胃カメラは初めてでしたが、痛みはそれほどありませんでした。ただし不快感はかなり強いというのが率直な感想です。所要はおよそ30分でした。
そして最大の想定外が、追加費用です。検査の途中で組織の一部を採取することになり、その場で6,170円を追加で徴収されました。予約確定メールに書かれていた22,300円は、あくまで予定どおりに終わった場合の金額です。当日は追加が発生しうる前提で、現金またはカードに余裕を持って行ってください。
ひとり社長は、健診費用を経費にできるのか
さて、ここがマイクロ法人ならではの論点です。この22,300円+αを法人の経費(福利厚生費)にできるのか。
国税庁の質疑応答では、人間ドックなどの費用を会社が負担しても、健康管理上の必要性があり、金額が一般的に妥当な範囲で、役員・使用人の全員が受けられるものであれば、給与として課税しなくてよいとされています。つまり、制度上は役員も対象になり得ます。
国税庁の質疑応答では、一定年齢以上の希望者が全員受診でき、実際に受診した人について会社が費用を負担する場合には、一般的な人間ドック程度の費用であれば給与として課税しなくてもよいとされています。一方、役員や特定の地位にある人だけを対象にすると、給与課税の問題が生じます。
ひとり法人の場合、対象者が結果として代表者である自分一人になります。国税庁の通達では「役員だけを対象として供与される場合」は課税上の問題が生じるため、一般の従業員もいる法人と同じように判断できるとは限りません。
否認された場合の痛みも小さくありません。福利厚生費として認められず、代表者に対する役員給与(経済的利益)と判断されれば、個人側で給与課税され、法人側でも損金算入できない可能性があります。
私は現状、健診費用は個人で負担しています。役員報酬を54,000円という最低水準に設定して社会保険のメリットを取りにいっている以上、そこに役員賞与とみなされうる支出を重ねるのは割に合わないと判断しました。数万円の損金のために、報酬設計そのものの説明が苦しくなるほうが損だからです。

とはいえ、これは私の判断であって唯一の正解ではありません。従業員を雇っている法人なら話はまったく変わりますし、規程を整えたうえで会社負担にしている例もあります。金額もそれほど大きくないので、顧問税理士がいる方は一度確認してみてください。
まとめ:補助は「知っていた人だけ」が受け取れる
- 2026年度から協会けんぽに人間ドック健診の補助(最高25,000円)が新設された
- 補助が使えるのは年度内に1回・人間ドックか生活習慣病予防健診のどちらか一方
- 私は2025年度は一般健診5,282円、2026年度は人間ドック22,300円。毎年ドックにする必要はなく、節目の年に上げるのが現実的
- 協会けんぽへの申込手続きは不要で、健診機関へ直接予約すれば完結する
- 当日は追加費用が出ることがある(私は生検で6,170円)。余裕を持って行く
- 健診費用の法人経費化は、ひとり社長だと役員賞与とみなされるリスクがある
会社を辞めると、健康診断は自動的にはやって来ません。社会保険に加入している以上、利用できる健診制度はきちんと活用したいところです。使わなければ、ただ流れていくだけです。
社会保険を「取られるもの」と考えるか「使い倒すもの」と考えるかで、二刀流の手ざわりはずいぶん変わります。健診はその一番わかりやすい入口だと思っています。
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参考(公的機関の一次情報)
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