移住先の選び方|9つの物差しで候補地を外していった50代の記録

移住先の選び方|9つの物差しで候補地を外していった50代の記録

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52歳の9月、千葉から大分へ地方移住しました。移住の全体像は52歳・独身が法人名義で地方に移住したにまとめていますが、この記事ではその最初の工程、移住先をどう選んだかを記載します。

先に結論を書いておくと、移住先は「選んだ」というより「外していった」結果でした。候補地を比べる物差しを9つ決め、表を埋めていくと、選んだ理由よりも外した理由のほうがずっと多く残りました。そして、外した理由を並べ直してみると、最初に立てた条件よりも一段具体的な「本当の条件」が見えてきました。

この記事では、物差しの決め方、実際に外した街とその理由、そこから見えた条件を順に紹介します。

目次

物差しの根っこにある「幸福の定義」

候補地を比べ始めたとき、最初にぶつかったのは「何を基準に比べればいいのか」でした。便利さ、家賃、自然の多さ。どれも大事そうに見えて、優先順位がつけられません。

その迷いに答えをくれたのが、「自分にとって幸せとは何か」を書いた次の言葉です。実はこの定義を言葉にしたのは、候補地をいくつも外したあと、2回目の下見の途中でした。振り返ると、物差しの根っこはずっとこれだったと思います。

知的好奇心を満たすだけの資産と時間がある状態。
今を生きていることを実感できる状態。

大きな資産の話ではありません。読みたい本を買い、晴れた夜に星を見に行ける。その程度のお金と時間が、続けられる形で手元にあればいい、という意味です。

この定義に照らすと、物差しに何が入り、何が入らないのかが説明できます。星空や書店・図書館は「知的好奇心」の側、海や山や田んぼを歩けることは「今を実感する」側です。逆に、にぎやかな繁華街やおしゃれな商業施設は、あれば楽しいけれど物差しには入りません。

今思えば、この定義を最初に書いておけば、迷う時間はもっと短かったはずです。価値観を定義で決めておくと、迷ったときに戻る場所になります。

最初に決めた足切り条件は2つ

比べ直す過程で、満たさなければその場で外す「足切り」の条件を2つに固めました。

  1. 雪がほぼ積もらないこと
  2. エレベーター付きのマンションの4階以上、または平屋であること

1つ目は、雪は良い面より困る面のほうが大きいと考えたからです。旅行先など一時的に触れる雪なら良くても、雪が降り、積もるのが日常になる環境は暮らしづらいと感じていました。2つ目は老後への備えで、階段しかない建物は、足腰が弱ったときにそのまま住めなくなります。4階以上にこだわったのは、趣味の天体観測のためでもあります。電線より上に出て、ベランダから星を見たいからです。

足切りの条件を2つに絞ったのは、多すぎると候補がひとつも残らないからです。ここで外すのは「どれだけ他が良くても住めない」ものだけにして、あとは物差しで比べることにしました。

移住先を比べる9つの物差し

足切りを通った候補は、次の9つの物差しで表にして比べました。

物差し見ていたこと
肉親の家までの距離急な体調の変化に、その日のうちに駆けつけられるか
星空の暗さ自宅、または近くで天体観測ができるか
生活の利便性スーパー・医療機関が生活圏にあるか
作業できる場所静かに集中できるコワーキング・カフェ・図書館があるか
家賃相場法人契約で月10万円未満、40㎡以上を借りられるか
ハザード洪水・内水・土砂災害・高潮・津波などの想定が大きくないか
物件数条件に合う物件を選べるだけの数があるか
書店と図書館大型書店があるか、図書館の蔵書は充実しているか
道路環境道が広く整備されているか、高速道路のICが近いか

いくつか補足します。

肉親の家までの距離を1番目に置いたのは、唯一の肉親である高齢の母の近くで暮らすことが、移住の動機のひとつだったからです。ただ、この距離は表に入れてはいたものの、最初から通常は車で1時間程度、交通事情などを含めても半日以内に動ける範囲と線を引いていました。実際には物差しというより、3つ目の足切りとして働いた条件です。

星空の暗さを入れたのは、天体観測が子供の頃からの趣味で、これから本格的に取り組んでいくつもりだからです。小学生の頃に和歌山県の潮岬で見た星空とハレー彗星は、今でも忘れられません。

1986年のハレー彗星
1986年のハレー彗星(写真:NASA/Liller)

作業できる場所は、コミュニティ目当てではありません。自宅にこもると仕事と生活の区切りがなくなるので、物理的に集中できる外の場所が欲しかったのです。これだけは「あればうれしい」でなく必須にしました。

家賃相場は、法人名義で借りる前提で上限を決めています。退職する前から、住まいを法人の社宅にできるようにマイクロ法人を設計していたからです(マイクロ法人と個人事業主の「二刀流」とは?)。地方へ移って家賃相場が下がれば、生活費が下がり、FIREに必要な資産額も下がります(50代独身FIREに必要な資産はいくら?)。

ハザードは、自治体のハザードマップや国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」で、洪水・内水・土砂災害・高潮・津波などのリスクを確認しました。

第1段階:大分県とその周辺で外した街

最初の比較は、大分県とその周辺で行いました。机上の調査と下見を合わせて、外した街と理由は次のとおりです。

街外した理由
県庁所在地の南部生活は便利だが、空が明るい(星空)
半島部の街道路は良く星もきれいだが、肉親の家まで遠い(足切り:距離)
県外の工業都市実際に訪ねて、雰囲気が合わなかった
山あいの城下町星は最高だが、生活の利便性が低い(利便)
沿岸の小さな市生活インフラが足りない(利便)
山あいの星空の町作業場所と住まいの動線が成立しない(作業場所)

いちばん迷ったのは、最後の山あいの町です。星空は私が下見した候補地の中ではトップクラス。市街地が川より一段高い台地にあり、ハザードマップ上でも浸水想定が比較的小さく見えました。机上では、9つの物差しのうち多くで高い点がついていました。

外した決め手は、下見で見えた作業できる場所の問題です。きれいなコワーキング施設はあったのですが、人里離れた場所にあり、利用者はほとんど見かけませんでした。施設の周辺には賃貸物件がほぼなく、物件が多い市街地からは距離があります。「コワーキングがある」と「住まいから通える」は、別の条件でした。

第2段階:西日本で組み直して外した街

ただし、選び方は一本道ではありませんでした。一度は大分を候補から外し、西日本全域で組み直した時期があります。このとき足切りの2条件を加え、物差しはそのまま範囲だけを広げました。

街外した理由
中国地方の宿場町エレベーターなし・近くに川・物件前が明るい(足切り・ハザード・星空)
関西の大都市の中心部街の変化と歩行マナー(実地で「ここではない」)
かつて住んだ関西の郊外閉塞感と高齢化(実地で「ここではない」)
九州北部の沿岸の市条件に合う物件が見つからない/雪が年に数回積もる(物件数・足切り)
四国の地方都市空が明るい(星空)
四国の川沿いの町水害のリスク(ハザード)
四国の古い町並みの町マンションが少ない(物件数)

いちばん学びが大きかったのは、中国地方の宿場町です。旧街道沿いの小さな町で、星空で知られる地域まで車で30分。生活に必要な店も近くにそろっていて、候補の物件までありました。

ところが、実際に内見に行くと、外れる理由が一気に並びました。

  • 3階建てでエレベーターがない(足切りに該当)
  • ハザードマップで確かめると、近くに川があり浸水の想定がある
  • ベランダの前は電線が多く、観測には向かない
  • 夜になると、物件の近くのパチンコ店と案内板の明かりで空がかなり明るい
幹線道路沿いの光害
幹線道路沿いの光害

幹線道路から少し離れれば星は見えます。それでも、自宅から観測するという目的には届きませんでした。

関西は、大都市の中心部と、かつて4年ほど住んだ郊外の両方を歩きました。昔の記憶にある街は、もうそこにはありませんでした。馴染みのある土地でも、老後にここで暮らしたいという気持ちは湧かなかったのです。

番外編として、関東のある街にも触れておきます。そこは、そもそも理想像として名前を挙げていた街です。適度に田舎で、必要なものがそろい、空がきれいで、高速のICも近い。最初の条件はこの街をモデルに書いたのですが、「ここに住みたいか」と自分に問うと、答えは違いました。

外した理由から見えた「本当の条件」

第1段階と第2段階で外した理由を並べ直すと、最初に立てた9つの物差しが、それぞれ一段具体的になっていました。

星空は「街」でなく「部屋」で決まる
空の暗い地域を選んでも、物件の前に明るい看板があれば観測はできません。中国地方の宿場町で分かったのは、星空の物差しは街単位ではなく、ベランダ単位で見るべきだということでした。「4階以上」の条件に「電線より上」という理由を書き足したのは、この下見の翌日です。

作業場所は「ある」でなく「通える」
コワーキングが市内にあっても、住まいから気軽に行けなければ、結局は自宅で作業することになります。物件と作業場所を、同じ地図の上で見る必要がありました。

理想の街と、住みたい街は違う
条件のモデルにした街も、馴染みのある街も、住みたい街ではありませんでした。条件表で点数が高くても、最後は「ここで暮らしている自分を想像できるか」で決まります。

候補を減らす作業は、そのまま自分の条件を言語化する作業でした。最初から完璧な条件表を作ろうとせず、仮の物差しで比べ始めて、外した理由から物差しを直していく。振り返ると、それがいちばん早い方法だったと思います。

まとめ:移住先に満点の街はなかった

最終的に、私は大分県に戻ってきました。今住んでいる町も、9つの物差しすべてで満点というわけではありません。それでも、足切りを通り、外した理由から見えた「本当の条件」には合っていました。

暮らし始めてから考えたことは、noteに書きました。

これから移住先を選ぶ方には、次の順番をおすすめします。

  1. 自分にとっての幸せを一行で書く
  2. 足切りの条件を2〜3個に絞る
  3. 比べる物差しを決めて表にする
  4. 下見で「外す理由」を探す
  5. 外した理由から物差しを直す

移住全体の流れ(内見・契約・断捨離・入居後の手続き)は、おひとりさま移住の全体像でまとめています。

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参考(公的機関の一次情報)

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本記事は運営者個人の体験・見解を記録したものであり、特定の金融商品・税務判断・投資手法を推奨するものではありません。実際のFIRE設計・法人設立・税務処理にあたっては、税理士・社労士・ファイナンシャルプランナー等の専門家にご相談ください。投資判断は自己責任でお願いします。

移住先の選び方|9つの物差しで候補地を外していった50代の記録

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この記事を書いた人

52歳・独身、大分県在住(2026年9月千葉県から移住)。
マイクロ法人×個人事業主の二刀流で、おひとりさまの人生後半戦を設計中。
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